11月A代表2連戦

今回は11月の代表戦を振り返りたいと思う。
まず、キルギス戦。90分を通して格下であるキルギスに押し込まれる展開が続いた。アウェイであり、ピッチコンディションが悪いことを差し引いても内容が悪すぎるゲームとなった。前半は相手の左CB、2番の選手から右ウイング、6番へのサイドチェンジから崩される形が多くみられた。後半になると回数はかなり減ったが、次第に相手の8番のドリブルに苦しめられるシーンは増えていった。また、セカンドボールがことごとく相手に奪われたことや、攻撃に転じた際のパスが特に中盤でずれることが多く、押し込まれる展開となった。伊東と原口をサイドで使っているのだから、シンプルにサイドからクロスで崩す方がピッチコンディションを踏まえても正しい選択であると感じたが、中央から崩すことに固執しているように見えた。2-0と勝利したが、勝利以外に好材料をみつけるのが難しいゲームとなった。
一方でベネズエラ戦も内容の悪いゲームとなった。前半から相手のテンポの良いパス回しから崩され、簡単にゴールを割られた。その原因は、前線からのプレスである。相手はSBが広く幅をとりながら、一方でCBとボランチは上手く三角形を作りながらワンツーでプレスを剥がしていく。前線の選手達を縦にも横にも広げたことで、よりプレス回避しやすいパス回しが出来る環境が生まれてしまった。後ろのパス回しで前線の選手を剥がした後、サイドに張ったウイングにパスを通し、日本のSBと1対1で対峙できる状況を作られてしまったことで、日本の守備陣は人数は揃っているのに、いとも簡単に崩されゴールを割られてしまった。後半は相手の体力による影響なのか南米選手によく見られる点差がついたことで手を抜く傾向によるものなのかはわからないが相手のテンポが落ち、日本は攻勢を見せたが、前半の4失点はあまりにも大きなものであった。もちろん、守備をしない中島を真ん中に置いてサイドでの数的不利を回避した影響もあっただろうが、どれほどの影響を与えていたかは試合が前半で決していた以上、真偽のほどは定かではない。

以下には選手の採点(10点満点で5.5を及第点とする)と寸評を載せる。

権田修一 6.5点
素晴らしい反応で数々の好セーブをみせてくれた。彼がいなければ敗戦も大いにあり得たゲームだろう。間違いなくキルギス戦のMOMだといえる。また、フィードも比較的安定していた。

 川島永嗣 5点
どの失点もDFが完全に崩されてしまっており、止めるのは難しかったか。セーブのシーンはあまりなかったが、大幅な減点はなかった。

 吉田麻也 5点
相手のロングボールにはしっかりと競り合いに勝ち、弾き返していた。しかし、相手の攻めに後手に回るシーンも多くみられた。結果的に無失点で終えたことはプラス材料。

 植田直通 4点
キルギス戦では相手のドリブルに剥がされるシーンがいくつかあり、持ち味の当たりの強さもほとんど見られなかった。フィードも精度を欠いていた。ベネズエラ戦は4失点したことも含め、DFを全く統率できなかった。前半での交代は負傷が理由のようだが、代えられることに全く疑問を抱かなかった。攻守両面で冨安と比較するとやはり見劣りする。今後A代表に関われるかどうかも未知数だといえるだろう。

 畠中槙之輔 4.5点
競り合いやポジショニングはまだまだ改善の余地あり。今後も召集するかどうかも分からないが、アジア予選で起用することはリスクでしかないだろう。持ち味のフィードも精度を欠き、相手の密集した場所へ蹴ったことでピンチを誘発した。
三浦弦太5.5点
相手のテンポの落ちた後半からの出場で無失点も高評価は難しい。ただ、出場してすぐに相手にガツンとあたり気合いを見せたことや、積極的なライン統率の声かけは評価に値するだろう。

 酒井宏樹 5点
いくつか良いクロスを上げていたが、ここ数試合と比較すると存在感は薄かったか。また、練習通りであろう、フリーキックをファーで合わせたシーンはシュートではなく、折り返して欲しかった。

 長友佑都 4.5点
前半早々から裏を狙われ、相手の6番に翻弄されていた。チーム全体が右に寄っているなかでサイドチェンジされ、ボールが渡ること自体には責任はないが、その後の1対1では負けるシーンが多く、修正はできなかった。持ち味のクロスもほとんど見られなかった。ガラタサライでは不調と年俸が高いことから放出される話が出ているが、それも納得してしまうパフォーマンスだった。
 室屋成 4.5点
1失点目は1対1で完全に振りきられ、クロスを上げられてしまった。その後も守備面でやられるシーンも多かった。また、ボールを受けた際にもパスコースがなく、縦に仕掛けるが奪われるというシーンが何度もみられた。後半は相手のペースダウンに伴い攻撃参加が増えたが、クロスの精度は高くなかった。攻守両面で酒井と比べると数段劣る印象。すぐに海外へ行った方が良いだろう。
 佐々木翔 4点
1点目は相手に完全に競り負け、その後も競り合いで負けるシーンがみられた。クロスも精度がなかった。攻守共にマイナス要素しかない。森保監督でなければ、代表に呼ばれることもなかっただろう。
 柴崎岳 5点
キルギス戦ではボールを散らす役割は担えていたが、サイドチェンジや永井や伊東の速さを使うパスがもっと見せて欲しかった。また、フリーでミドルシュートを打った場面では、最低限枠内には飛ばして欲しかった。ベネズエラ戦はキャプテンとして出場するも、前半の失点の連鎖の流れを止められなかった。キャプテンシーに疑問が残る。攻撃も受けてボールを散らす役割に終始し、決定的なパスは右サイドで室屋を走らせたシーン位か。東京五輪でのOA起用も噂されるが、能力やキャプテンシーも含め疑問が生じる。まずはチームで出場機会を増やし、コンディションを整える必要がありそうだ。

 遠藤航 5点
押し込まれていた影響もあり、いつもよりやや後ろに位置していたことから、中盤におけるセカンドをほとんど拾われてしまった。また、相手のドリブルに後手に回るシーンも見られ、イエローカードももらってしまった。得点につながるFKを獲得したのはプラス材料。

 橋本拳人 4.5点
持ち味のボールを奪うプレーはあまり見られず。むしろ足元の技術のなさが強く表れた試合となった。また、1失点目のシーンは室屋の後ろにいたが、2対1になるようフォローできる位置をとるべきだった。

 山口蛍 6点
キルギス戦は遠藤がイエローカードをもらっていた影響で途中出場。ただ、相手の流れを変える選手交代にはならなかった。一方ベネズエラ戦は後半途中から出場し、ゴールを奪った。パス回しでもうまく関わり、また得意のパスカットも見せた。遠藤のような高さがないのがマイナス要素だが、森保ジャパンに必要な選手であると再認識されられた。

 伊東純也 5.5点
PK獲得のシーンはトラップミスかもしれないが、結果的に南野への良いパスとなった。ただ、持ち味のスピードやクロスをみせる場面はほとんどなかった。前半途中から相手の2番へ寄せるようになったためロングパスを蹴らせなかったが、スピードを生かしたプレスでもっと相手を焦らせられれば良かった。

 原口元気 6点
キルギス戦でフリーキックでゴールを決めたため、及第よりやや高めの採点だが、2戦とも攻撃面で大きな違いを見せられたとは言えない。キルギス戦では左サイド中盤でタメを作る場面、ドリブルは何度か見られたが、決定的な仕事はできず。フリーキックもコースは良かったが、相手のGKのミスといえるだろう。あの壁の作り方ならあのコースは絶対に止めなければいけないコース。レベルの高い相手なら止められていただろう。ベネズエラ戦は右サイドで起用され、後半から左に。ただ、初召集の古橋の方が圧倒的に起点になっており、守備的サイドアタッカーという認識がより強まった。

中島翔哉 4.5点
キルギス戦では、彼が出場してすぐに数少ない長友のオーバーラップが見れたことは、相性の良さを表しているのかもしれない。しかし、それ以降ほとんど攻撃に絡めなかった。2-0とリードしているなかで、守備をサボる中島を起用した森保采配に疑問は残る。ベネズエラ戦は、簡単に言えばひどいの一言。前半から低い位置でボールを受け、ドリブルで仕掛けるも剥がせず奪われてカウンターを受ける。特に密集したところで受けるまでは良いのだが、明らかに囲まれているのに仕掛けるため、当然のように奪われてしまう。後半には攻撃が期待され、サイドから真ん中へポジションを移動。ただ、球離れが悪くボールを頻繁に失った。ドリブルのキレ、ファーストタッチ、周囲の状況判断が極端に悪く、所属チームのポルトで出場できないのもうなずける。特に、守備をしないのだから、最低ウルグアイとの親善試合のパフォーマンスをみせる必要がある。ポルトをすぐに離れるべきだろう。彼はエースとして守備が免除され、攻撃を自由にさせてくれないと厳しい選手だ。ポルティモネンセが最適だったのでは…。

古橋亨梧 6点
ベネズエラ戦の後半から出場。前半で4失点したなかで、落ち着いてプレー。右サイドでボールを受け、前半にはなかった攻撃の起点になっていた。そのなかでもシュートを3本ほど打つなど、持ち味をしっかりと発揮した。ベネズエラ戦の数少ない収穫といえる。

井手口陽介 5.5点
出場時間は短く、また、本職とは違う左サイドMFで起用された。相手のペースが落ち、チームが押している状況での出場だったためボールに多く関われたが、本職ではないためドリブルでかわしてシュートやクロスという形は少なく、ボールをボランチなどに戻しながら崩そうとするため、攻撃に時間がかかってしまったのは点差があるなかでマイナス要素だろう。
 南野拓実 6点
守勢に回り、いつもと比べると攻撃に携わる回数は少なかったが、そのなかでPKを獲得し、点をとるのは流石だ。一方フリーなポジションを見つけてボールを受けようとしていたが、後ろの選手からボールが出てこなかった。

浅野拓磨 5点
裏への抜け出しを何度かみせていた。鈴木武蔵よりも持ち味を発揮しようという意欲をみせていたが、技術不足もあり決定的な仕事はできなかった。
 永井謙佑 5点
キルギス戦は守備で前線からプレスをかけていたが、いつもより勢いはなく、あまり効果が見られなかった。攻撃面でも持ち味のスピードを生かす場面は少なく、ボールも収まらなかった。一方でベネズエラ戦は全力でプレスをかけにいったため、何度かチームとしてボールを奪えていた。トップ下が中島でなければもう少しボールを奪えていただろう。また、山口のゴールもアシストした。



鈴木武蔵 4.5点
キルギス戦は試合出場時間はあまりにも短すぎた。クロスにあと一歩届かなかったシーンは、出し手のタイミングと合っていなかったため、動きだしは改善する必要がありそうだ。一方ベネズエラは先発出場。しかし、持ち味のスピードを生かす場面はなく、ボールをおさめる仕事もできずに45分で交代。