日本代表10月2連戦

今回は少し遅くなってしまったが、日本代表の10月2連戦を振り返りたいと思う。

まずはモンゴル戦。90分通して試合を支配し、6点取って快勝。右がダメなら左。左がダメなら右と相手に的を絞らせず、ボールウォッチャーになるという相手の弱点をつくためにクロスを多用した。特に右サイドからは効果的なボールが多く、伊東は3アシストをあげた。伊東はクラブではポジショニングで中に入ることも多いが、この試合は外に張る場面が多かった。クロスを多用するためだと思われるが、本来の持ち味が存分に発揮されており、伊東を起用した采配は素晴らしかった。冨安の怪我がなければ最高のゲームだったと言えるだろう。

一方でタジキスタン戦は前半は劣勢に立たされた。移動による疲労と人工芝で踏んばりにくい影響か運動量が少なく、プレスが中途半端で剥がされるシーンが多く見られた。相手が強豪クラスの決定力を持っていたら少なく見積もって2点は取られていたのではないか。また、パス回しも味方を探すシーンが多く、パススピードは遅かった。モンゴル戦のようなサイドチェンジもほとんど見られなかった。後半早々に点をとって少し落ち着いたが、それでも終盤まで運動量は上がらなかった。結果は3-0だが今後に不安を残す試合となった。

以下には選手の採点(10点満点で5.5を及第点とする)と寸評を載せる。

 権田修一 6点
モンゴル戦は仕事はほぼなかったが、タジキスタン戦では1対1を止めた。あの場面で決められていたら勝敗は全く分からなかっただろう。その他のシュートは精度も威力もなく、さほど難しいものではなかった。

 吉田麻也 5.5点
守備は2戦とも安定していた。タジキスタン戦では危険なパスミスはあったものの大事には至らず。むしろ相手の裏をつく攻撃を止めていた印象のが強い。一方、モンゴル戦ではゴールを決めたが、タジキスタン戦では決定機を逃した。このレベル相手ならセットプレーで合わせることは容易であることから、しっかり決めきってもらいたい。

 冨安健洋 5.5点
数少ないカウンターにもきちんと対応していて、裏へのボールへの反応は相手を遥かに上回り、チャンスを作らせなかった。攻撃はサイドバックが積極的に攻撃参加していたこともあり、いつもより自重したか。怪我をしたのはとても残念。11月の試合に間に合うと良いが…。

 植田直通 4.5点
持ち味のフィジカルを見せる場面もあったが、格下相手に後手を踏んでいた。決定的なパスミスからあわやというシーンも作られた。攻撃の起点となるフィードの精度や後ろでのパス回しのポジションなど特に攻撃面での課題が強く見られた。怪我の冨安、昌子が復帰すれば出番は限られるだろう。

 酒井宏樹 7点
モンゴル戦、タジキスタン戦共に攻撃面で大きな貢献をした。モンゴル戦では伊東を自由にプレーさせることで3アシストを陰で支えた。また、タジキスタン戦は自らが2アシストした。格下相手とはいえ、精度の高いクロスは評価できる。守備面でも簡単に裏をとらせず。タジキスタン戦では激しい当たりをみせた。イエローをもらわなかったのは幸いだが…。右サイドバックとして替えが利かない不動の存在だけに、最近怪我がちな所は不安材料だ。

 長友佑都 6点
モンゴル戦では10年ぶりのゴール。あの位置まで飛び込んでいたことは評価できる。一方タジキスタン戦はあまり目立たなかった。人工芝の影響かセリエAドリブラーを抑えていたような守備がみれなかったのは残念。

 安西幸輝 6点
酒井の負傷退場によって出番がきた。得点には絡めなかったが、持ち味の攻撃力は見られた。守備機会はほとんどなかった。攻撃力は高いものを持っているだけに守備力がどれだけ強豪に通用するかが重要。酒井、長友の不動の二人は、守備というサイドバック本来の役割に+αとして攻撃で大きな貢献を見せている。ポルトガルで守備力を磨いていって欲しい。

 柴崎岳 5.5点
モンゴル戦では遠藤との連携がよく、起点となっていた。守備への切り替えもよく、相手の攻撃の芽を摘んでいた。一方でタジキスタン戦では攻守の切り替えが悪く、中盤でスペースが生まれてしまっていた。持ち味のサイドチェンジもほとんどみられなかった。らしくないキックミスも見られたのは人工芝の影響か。

 遠藤航 6.5点
柴崎との連携がよく、安定していた。ボールを受ける位置も良く、特に右サイドで伊東、酒井と好連携をみせていた。また、微妙のジャッジではありながらも代表初ゴールを記録。鎌田のゴールシーンでも素晴らしいミドルシュートを打っており、攻守で存在感を示した。柴崎と共にボランチのレギュラーといえるだろう。

 橋本拳人 4.5点
人工芝の影響か動きが悪く、持ち味のボール奪取はあまり見られなかった。特に前半はミスも多く、ボールホルダーへ寄せ、剥がされてしまった後の動きが本来の動きではなかったことから、人工芝に気を取られ、動きを無意識にセーブしていたのかもしれない。遠藤がモンゴル戦でアピールしただけに、よりマイナスの印象が強くなってしまった。

 伊東純也 7.5点
モンゴル戦でのスタメン起用は驚きもあったが、素晴らしいパフォーマンスをみせた。ボールウォッチャーになりやすい相手の弱点を突くため、クロス多用することから起用されたが、3アシストと起用に見事応えた。一気に堂安の定位置を奪う位の強いインパクトだった。酒井から安西にサイドバックが変わった際にはポジションを少し中目にとり、安西の良さを出すためサイドのスペースを空けるというフレキシブルさもみせた。欲を言えば、ゴールが欲しかった。

 堂安律 4点
モンゴル戦での伊東の活躍もあり、堂安の意地をみれると期待していたが、完全に裏切られた。攻守共に普段よりも動きが悪く、本来の動きを取り戻したのは後半半ばからだった。中に入り、サイドにスペースを空け、そのスペースから酒井が2アシストしたという点は好材料だが、結果は出せず、物足りないと言わざるを得ない。キルギス戦では結果を残して欲しい。

 中島翔哉 5.5点
モンゴル戦ではセットプレーから2得点を演出した。ただ、相手の実力を考えるとセットプレーの質が高かったとは言えず、強豪と戦うことを想定すれば、もっと質を高めなければならない。タジキスタン戦では1点目をアシスト。大きな得点を演出した。一方で2試合を通してパフォーマンスが良かったとは言えない。昨年のウルグアイとの試合で見せたようなドリブルシーンは少なく、モンゴル戦は伊東の影に隠れた。タジキスタン戦は起点となるためボールを多く触っていたが、アシスト以外は仕事を果たせたとは言い難い。浅野に変わってから起点すらなくなってしまったのは事実だが…。

 原口元気 6点
出場はモンゴル戦の途中出場のみと出番は少なくなってきているが、モンゴル戦はらしくプレーし、アピールしていた。結果にはつながらなかったが、ドリブル突破など良いプレーをしていた。ただ、中島と比較すると攻撃面が劣る印象は否めない。今後も途中出場が多そうだ。スタメンは守備的な試合あるいは3バック時の左ウイングバックに限られるか。

 浅野拓磨 5.5点
タジキスタン戦で左サイドでの途中出場。ヘディングでゴールを決めた。ただ、その前に決定機を外したり、中島から代わったことで起点がなくなり、タジキスタンに押し込まれる時間につながったことを踏まえると、ゴール以外の面ではマイナスといえる。もちろん本来のポジションではなかったことは考慮されるべきだが…。

 南野拓実 7点
2試合で3得点。特に両試合共に先制点を奪ったという点は高評価に値し、素晴らしいパフォーマンスだったといえる。モンゴル戦は早々に試合が決まったため、温存させることも成功した。ただ、タジキスタンの前半終了間際の決定機を外したシーンはかなりの減点材料。あれだけフリーになったシーンは決めておかねばならない。結果的に後半相手の運動量が落ち、3-0という結果で終わったが、あのシーンで決めていれば後半の試合運びはより優勢に運べただろう。

 永井謙佑 6点
ヘディングでゴールを決め、好調さをアピール。ただ、全体的にボールに絡むシーンは少なく、ゴールがなければマイナス評価といえる。大迫とは同じ役割を求めていないが、日本代表のFWとして世界と戦うことを踏まえると物足りなさがうかがえる。

 鎌田大地 5.5点
モンゴル戦では代表初ゴールを決めた。ただ、決定機にダイレクトでシュートを打たず、トラップしたことによってチャンスを逃したのは痛かった。タジキスタン戦はいくつか起点にはなったものの、全体的にボールを触る回数も少なく、FWとして結果を残せなかった。2戦通してゴール以外にアピールポイントを見せたとは言えないだろう。

 久保建英 6点
わずかな時間ではあったが、良いプレーを見せていた。残念ながら代表初ゴールはお預けになったが、今後に期待したい。これだけの出場時間しか与えられないのであればクラブに残ってレアルマドリードのとの試合に出場して欲しかったが…。 

 森保一 6点
モンゴル戦では伊東の起用が的中。南野を60分で交代させ、温存させることも出来た。タジキスタン戦は人工芝への対応がチームとしてできていなかったのはマイナス要素だが、2試合共に点差をつけて勝利したことは評価されるべきだろう。